経理

多店舗展開を成功させるための経理DXの第一歩

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こんにちは。
フィットネス業界税理士の小西舞です。

フィットネスジムを1店舗、2店舗と育て上げ、さらなる多店舗展開を見据えている経営者の方に、少し立ち止まって考えていただきたいことがあります。

「会員数は着実に増えているのに、なぜか手元に現金が残らない」
「次の出店を狙っているが、今の収益状況で銀行融資が通るのか、正直なところ確信が持てない」
「先月の正確な利益が出るのは、いつも翌月末か翌々月になってから」

こうした悩みを抱えながら経営を続けている方は、実のところ少なくありません。
私がフィットネス業界のクライアントと話すとき、規模の大小を問わず、似たような声をよく耳にします。売上の伸びは感じているのに、経営の手応えがどこかついてこない。その正体の多くは、会計情報の遅れと不透明さにあります。

本記事では、フィットネス業界に特化した税理士の立場から、多店舗展開において会計情報の早期把握がなぜ重要なのか、そして経理体制の現状把握がなぜすべての出発点になるのかを、順を追って説明します。

PDCAの「C」が2ヶ月遅れる会社が陥ること

経営の基本はPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を回し続けることです。ところが、多くのフィットネスジム経営において、「C(評価)」の部分だけが著しく遅れています。

たとえば、4月に実施した広告施策の結果が経営者の手元に届くのが6月になる、というケースは珍しくありません。このとき、現場では5月も引き続き同じ広告を出稿しています。仮にその施策が不発だったとしても、検証して手を打てるのは2ヶ月後です。広告費の無駄が積み上がるだけでなく、機会そのものを失います。

1店舗であれば影響は限定的ですが、店舗数が増えるほどこのタイムラグのダメージは大きくなります。1店舗あたり利益率が数ポイント悪化するだけで、3店舗・5店舗と展開した場合には全社で看過できない損失に発展します。会計情報をできる限りリアルタイムに近い形で把握することは、経営の「視界」を確保することと同じ意味を持ちます。

「売上の数字だけ」で判断することのリスク

経理から正確な数字が上がってこない状況では、経営者は現場報告の売上数字(入会数・物販売上など)だけを頼りに意思決定せざるを得なくなります。しかし、売上が増えていても、コスト構造が崩れていれば手元には何も残りません。

よく見られるのは、次の3つのパターンです。

広告費の過剰投入:新規入会者は増えているのに、獲得単価(CPA)が想定をはるかに上回っている。売上は伸びているように見えても、利益は静かに削られています。

変動費の肥大化:物販原価や業務委託スタッフへのインセンティブは、店舗数が増えるほど管理が難しくなります。現場任せになった結果、気づいたときには想定外の額になっていた、というのはよくある話です。

固定費の異常値の見落とし:店舗ごとの水道光熱費やメンテナンス費用は、1店舗が突出して高くなっていても、データが揃うのが翌々月では手の打ちようがありません。

「売上はあるのに利益が残らない」という状況は、多店舗展開を急ぐ過程で収支構造が静かに崩れているサインです。売上と並行して「どこでコストが発生しているか」をリアルタイムで把握できる仕組みが不可欠です。

なぜフィットネス業界の経理はブラックボックスになりやすいのか

「経理担当者が何にそれほど時間をかけているのかわからない」という経営者の声と、「毎月ギリギリまで作業が終わらない」という担当者の声が同時に存在する職場は、フィットネス業界では珍しくありません。

この乖離には理由があります。フィットネス業界の経理には、他業種と比べて複雑な要素が重なりやすいのです。

入金経路ひとつをとっても、クレジットカード決済・口座振替・現金・電子マネーと複数の経路が混在します。それぞれ入金サイクルが異なるため、月次でのキャッシュ照合だけで相当な手間がかかります。

支払い面では、店舗ごとの賃料・設備費・システム利用料・備品費が発生し、本部への集約に時間がかかります。給与計算は固定給にセッションインセンティブが加わる非定型の構造が多く、計算ミスのリスクも抱えています。各店舗スタッフからの領収書回収が月次締めのボトルネックになっているケースも頻繁に見られます。

これらが紙やExcelで管理されている場合、どこかで必ず作業が詰まります。さらに厄介なのは、現場の担当者が「引き継いだまま意味を理解していない確認作業」や「誰かがやめても困るからと続けている二重入力」を惰性でこなしているケースが多いことです。問題は担当者の能力ではなく、仕組みそのものにあります。

改善の出発点は「現状の棚卸し」

「早く数字を出せ」と指示しても、仕組みが変わらなければ状況は変わりません。まず必要なのは、現在の業務フローを可視化し、どこに詰まりがあるのかを特定することです。

次の4つの観点で確認してみてください。

現金・預金管理:各店舗のレジ現金と銀行口座の照合は、いつ・誰が・どのような方法で行っているか。通帳記帳のために支店へ出向く手間がまだ残っていないか。

請求・支払いサイクル:各店舗から届く請求書が本部に集まるまでのタイムラグはどれくらいか。承認フローが複雑になりすぎて支払いが遅延していないか。

売上・売掛金管理:予約システムや決済システムのデータ連携は自動化されているか。会員ごとの未収金はリアルタイムで把握できているか。

給与計算・経費精算:インセンティブの集計に毎月どれだけの時間を費やしているか。スタッフからの領収書回収が締め作業の障害になっていないか。

これらを書き出すだけでも、「なぜ数字が遅いのか」の輪郭がかなり見えてきます。

経理DXで実現する、数字を「使える」経営

現状の把握ができたら、次は詰まっている箇所への具体的な対処です。

マネーフォワードやfreeeといったクラウド会計を活用し、銀行口座やクレジットカードと連携させれば、預金残高の確認や経費の入力にかかる時間は大幅に削減できます。入力ミスも減ります。

店舗ごとの部門別管理を導入すれば、「どの店舗が利益を出しているか」「どの店舗に問題があるか」がすぐに確認できるようになります。全店舗合算の数字しか見えていない状態では、不振店舗を稼ぎ頭の利益で覆い隠したまま展開を続けてしまうリスクがあります。

多店舗経営に必要なのは、特定のベテラン担当者の勘や記憶に依存した経理ではありません。担当者が変わっても同じスピードで正確な数字が出る、標準化された仕組みです。その仕組みが整って初めて、経営者は数字を「待つ」立場から「使う」立場に変わることができます。

経理体制の現状把握、一緒に取り組みます

「何かがおかしいのはわかっているが、どこから手をつければいいかわからない」という方に、まず「経理業務の現状診断」をご提案しています。

私はフィットネス業界に特化したパートナーとして、貴社の経理フローを丁寧にヒアリングし、ボトルネックを特定します。そのうえで、月次決算を10営業日以内に確定させ、翌月初旬には経営判断に使える数字が手元にある状態を目指す、具体的なロードマップをご提示します。

税務申告の代行だけではありません。数字を「出す」仕組みを整えるところから、数字を「経営に活かす」ところまで、継続的に関わることを前提としています。

多店舗展開を実現するための土台は、現場の熱量だけでは作れません。正確な数字が迅速に手元に届く経理体制が、その土台になります。まずは貴社の現状を聞かせてください。

Profile
小西 舞
小西 舞
税理士
1992年生まれ。フィットネス業界税理士。
銀行での不動産実務と、人材ベンチャーでの現場感覚を併せ持つ。自身の産後を救った運動の価値を信じ、多店舗展開に挑む経営者を支援。
経理早期化、KPI管理、財務戦略を柱に、資金と数字の不安を解消します。
不動産、人材の知識も掛け合わせ、経営者が「最高のサービス」に集中できる環境をサポートします。
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