管理会計

安定した多店舗展開のために、管理会計導入を決めたらやるべき5つのステップ

c.scn.157

「そろそろ2店舗目、3店舗目を出したい」
——そう考え始めたとき、多くのフィットネス経営者が直面するのが「数字が見えなくなる」という問題です。1店舗のときは肌感覚で把握できていた会員数や収支も、店舗が増えると感覚だけでは追いつかなくなります。

そこで必要になるのが「管理会計」です。

とはいえ、導入を決めたものの「何から手をつければいいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。

今回は、フィットネス業界専門の税理士の立場から、管理会計導入後にやるべきことを5つのステップで、まずは全体像としてご紹介します。各ステップの具体的な進め方については、次回以降の記事で一つずつ詳しく解説していきます。

ステップ1:経理の早期化


管理会計の土台になるのが「経理の早期化」です。月次決算が翌々月にずれ込んでいるようでは、出てきた数字を見ても「もう過去の話」になってしまい、経営判断に活かすことはできません。

目安としては、月初から5〜10営業日以内に前月の数字を確定させることを目標にしましょう。早期化のために有効な工夫は次の通りです。

  • 今の経理業務の流れを可視化し、遅れる原因になっている箇所を洗い出す
    経理担当者と社長に同席いただき、省いてよい作業を抽出
    会員管理システムや決済データと会計ソフトを連携し、手入力を減らす
    賃料やリース料などの固定費は年間スケジュールをあらかじめ組んでおく
    「ざっくり速報値」と「あとから出す確定値」の2段階で運用し、スピードを優先する


多店舗化の初期は、システムが整っていないことも多いものです。最初から完璧を目指さず、「毎月決まったタイミングで数字が出てくる」というリズムをつくることを優先してください。

ステップ2:店舗別会計の導入

経理のスピードが整ったら、次は「店舗別会計」の導入です。全社の決算書だけでは、好調な店舗が不調な店舗の赤字を覆い隠してしまい、問題の発見が遅れてしまいます。

店舗別損益(店舗別P/L)では、以下のように「店舗が直接コントロールできる費用」と「本部でかかる共通費」を分けて見える化することがポイントです。


特に「共通費の配分ルール」は、後から店長間の不公平感につながりやすいポイントです。会員数比・売上比・面積比など、配分の基準を最初に決めて文書化し、期中で頻繁に変えないようにしましょう。

ステップ3:根拠ありの予算作成


店舗別の数字が見えるようになったら、次は「予算」を作ります。ここで大切なのは、過去の延長や経営者の感覚ではなく、根拠のある数字で予算を組むことです。

具体的には、以下のような積み上げ方式が有効です。

  • その店舗の損益分岐点となる会員数を算出する
  • 過去の入会率・退会率の実績から、月別の会員数推移を予測する
  • 客単価や人件費率など、実績データに基づいた費用構造を反映させる


特に新規出店の場合は、オープン後3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月といった段階ごとの目標値を設定し、既存店と同じ基準で評価しないことも重要です。立ち上がり期の店舗を既存店の基準で見てしまうと、現場が「最初から達成不可能な目標」と感じてしまい、予算そのものへの信頼が失われてしまいます。

ステップ4:追うべきKPIの抽出

予算と並行して整理しておきたいのが、財務数値の「背景」を説明するKPIです。フィットネス業態では、特に以下の指標が重要となることが多いです。


ここで注意したいのは、KPIを増やしすぎないことです。指標が多すぎると、結局誰も全部を見なくなってしまいます。まずは2〜3個に絞り、店舗別P/Lとセットで月次確認する運用から始めるのがおすすめです。

ステップ5:予算・前年対比での進捗管理


予算とKPIが整ったら、それを「作って終わり」にせず、継続的に実績と比較する運用に乗せます。ここでは2つの視点を併用することをおすすめします。

  • 予実比較:当月の実績が、自分たちが立てた予算に対してどう進んでいるか
  • 前年同月比較:季節要因や市場全体の動きを踏まえ、昨年の同じ時期と比べてどう変化したか

予算だけを見ていると、「予算自体の精度が低かった」という可能性に気づきにくくなります。一方、前年対比だけだと、急成長中の店舗では参考にならないこともあります。両方を併用することで、より立体的に状況を把握できます。

差異が出た際は、「なぜズレたのか」を数字とKPIの両面から、現場の状況とあわせて確認する場(経営会議・店長会議)を毎月のルーティンとして設けましょう。

まとめ


多店舗展開に向けた管理会計の導入は、一度に完成させるものではありません。

「経理の早期化」→「店舗別会計」→「根拠ある予算」→「追うべきKPIの抽出」→「予算・前年対比での進捗管理」という順番で、段階的に仕組みを育てていくことが、結果的に最短距離になります。

店舗数が少ない今のうちに数字を見て議論し、改善するサイクルの「型」を作っておくことが、将来店舗数が10店、20店と増えたときに大きな差となって表れます。

次回からは、この5つのステップを一つずつ取り上げ、具体的な実務の進め方を詳しく解説していきます。

当事務所では、フィットネス業界に特化した管理会計の導入支援、店舗別損益の設計、融資に向けた資料作成のサポートを行っております。

「自社の場合、何から始めればいいか分からない」という方は、お気軽にお問い合わせください。

記事URLをコピーしました