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スムーズな多店舗展開を目指すジム経営者のための「プロパー融資」攻略ガイド

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ジム経営において、1店舗目の成功を足がかりに2店舗、3店舗と拡大を目指す際、最大の壁となるのが「資金調達」です。
多くの経営者が「銀行からお金を借りる=保証協会を通すもの」と考えていますが、実はその認識だけでは、3店舗目あたりで出店スピードが急ブレーキをかけることになりかねません。

スムーズな多店舗展開を実現する鍵は、銀行から「ぜひプロパー融資でお願いします」と頭を下げられるような実績と関係性を作ることです。

本記事では、戦略的な出店スピードを維持するために不可欠な「プロパー融資」の全貌と、それを引き出すための具体的な戦略を徹底解説します。

1.そもそも「プロパー融資」とは何か

銀行融資には、大きく分けて

  • 「信用保証協会付き融資」
  • 「プロパー融資」
  • の2種類があります。この違いを正確に理解することが、財務戦略の第一歩です。

の2種類があります。この違いを正確に理解することが、財務戦略の第一歩です。

① 信用保証協会付き融資

「信用保証協会」という公的機関が保証人となってくれる融資です。

コスト: 銀行に支払う利息とは別に、協会に支払う「信用保証料」が発生します。

仕組み: 万が一、借り手が返済できなくなった場合、協会が銀行に対して借入残高の一定割合(通常80%〜100%)を立て替え払い(代位弁済)します。

銀行側の視点: 貸し倒れのリスクが極めて低いため、創業間もない企業や、財務基盤がまだ弱い中小企業にも積極的に貸し出しを行います。

② プロパー融資

信用保証協会の保証を一切つけず、銀行が自らの判断と責任(100%自己責任)で直接貸し出す融資です。

コスト: 保証料がかからないため、実質的な資金調達コストを抑えられます。また、銀行との信頼関係が深まれば、融資金額や金利の交渉もしやすくなります。

仕組み: 万が一返済が滞った場合、その損失はすべて銀行が被ります。

銀行側の視点: リスクが大きいため、審査は非常に厳格になります。企業の業績、将来性、経営者の資質が厳しくチェックされます。

2.なぜ多店舗展開には「プロパー融資」が不可欠なのか

信用保証協会の保証枠には、明確な上限が決まっています。

  • 無担保枠: 8,000万円
  • 有担保枠: 2億円   合計: 2億8,000万円

一見、大きな金額に見えますが、ジム経営の場合、物件の保証金、内装工事、最新マシンの導入などで1店舗あたり数千万円の投資が必要です。
3店舗、5店舗と増やしていくと、あっという間にこの上限に達してしまいます。

なお、災害時等には別途追加で保証枠が設定される場合もあります。

「月商3ヶ月」の原則

さらに、上限額以前の問題として、銀行は「借入総額を月商の3〜4ヶ月分以内に抑えたい」という目安を持っています。 例えば、月商1,000万円(年商1.2億円)の企業であれば、3,000万円〜4,000万円が借入の適正ラインと見なされます。この場合、たとえ保証枠が8,000万円残っていても、追加の融資が断られるケースが出てくるのです。

おおよそ、月商3,000万円(年商3.6億円)を超えてくると借入適正ラインが9,000万円~1億2,000万円程度となり、信用保証協会付き融資の枠(無担保)の8,000万円を超えてくる可能性が出てきます。
※赤字であったり、その他財務内容に不安があると月商3ヶ月~4ヶ月の借入も出来ないことが多いのでご注意ください。

出店ペースを落とさないためにも、「保証協会の枠を温存しつつ、プロパー融資で資金を引っ張る」という二段構えの戦略が必須となります。

3.銀行員が見ている「決算書の3つのポイント」

プロパー融資を引き出すためには、銀行の審査(格付け)で高評価を得る必要があります。ジム経営者が特に意識すべき指標は以下の3点です。

① 債務償還年数(返済能力)

銀行が最も重視する指標です。「今のキャッシュフローで、すべての借金を何年で返せるか」を表します。

債務償還年数=有利子負債 (借入) ÷ ( 営業利益+減価償却費 )

これが10年以内であれば優良とされ、プロパー融資の土台に乗ります。
ジム経営は減価償却費が大きくなりやすいため、利益をしっかり出していればこの数字は改善しやすい傾向にあります。

② 自己資本比率(安全性)

総資産のうち、返済不要の自分のお金がどれくらいあるかです。

自己資本比率={ 純資産÷(負債+純資産)}× 100

20%以上あると銀行の安心感が増します。赤字が続くと純資産が削られ、この比率が下がってしまうため注意が必要です。

③ 2期以上の連続黒字(安定性)

プロパー融資は「継続的な返済」が前提です。1期だけの大幅黒字よりも、少額でも良いので2期、3期と着実に黒字を積み上げている方が、銀行からの信頼は厚くなります。

4.プロパー融資を勝ち取るための「具体的アクション」

信用保証協会付き融資の返済実績を積み上げ銀行の審査(格付け)で高評価となる決算書を提示できるようになった上で、戦略的にプロパー融資を勝ち取っていきましょう。

戦略1:短期・少額の「プロパー実績」を積み上げる

いきなり数千万円の設備資金をプロパーで借りるのは難易度が高いです。まずは「短期プロパー融資」から始めましょう。

  • 用途: 決算時の納税資金、従業員への賞与資金、運転資金のつなぎ
  • 金額: 300万円〜500万円程度
  • 期間: 6ヶ月〜1年(短期で完済する) 「プロパーで借りて、計画通りに完済した」という履歴(トラックレコード)が、次の大型融資の際の最強の武器になります。

戦略2:保証協会付き融資との「協調融資」を提案する

「今回の3,000万円のうち、1,500万円は保証協会、残りの1,500万円はプロパーで検討いただけませんか?」と打診する方法です。銀行側からすれば、リスクを半分に抑えつつ、一行単独での実績を作れるため、比較的交渉に応じやすくなります。

戦略3:銀行間での「競争環境」を作る

常日頃から複数行と取引を行うようにし、メイン銀行との信頼関係を築き上げるのと同時にサブ銀行とも良好な関係を作っていきましょう。

他の銀行に融資を取られたくないと思う銀行は、良い条件を提示してくれるかもしれません。

例えば、プロパー融資を受けたい旨を伝えた際、サブ銀行からプロパー融資と保証協会付き融資との協調融資の提案があった場合、メイン銀行に対して

「他行さんからもプロパー融資と保証協会付き融資との協調融資の提案をいただいているのですが、メインである御行さんを優先したいと考えています」

という交渉は、強力なフックになります。
プロパー融資のみでの提案もしてきてくれるかもしれません。

結び:最短距離で夢を叶えるために

多店舗展開の成功は、マーケティングやサービス力だけでなく、「財務戦略」にかかっています。 3店舗目の出店計画を立てる際、銀行から「もう枠がいっぱいです」と言われてからでは手遅れです。1店舗目、2店舗目のうちから、今回ご紹介した「プロパー融資」の準備を始めてください。

「自社の今の決算書でプロパー融資は可能なのか?」「まずはどの銀行に、どう話を切り出すべきか?」など、具体的な戦略立案が必要な際は、ぜひご相談ください。 あなたのビジョンを数字で裏付けし、最短距離で多店舗展開を実現していきましょう。

ABOUT ME
小西 舞
小西 舞
税理士
1992年生まれ。銀行、人材ベンチャーを経て税理士業界へ。
宅建試験合格者としての知見も備え、ジム・サロン経営の「多店舗化」に特化しています。
融資・組織・物件・財務の多角的な現場視点で、2店舗目以降も揺るがない安定経営を伴走サポートさせていただきます。
どんなことでも、まずはお気軽にご相談ください。
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